顧客志向の複雑
苦境に立つ米国GMの戦略転換によって資本提携の先行きが見えないスズキの軽自動車が危ない。日本国内の軽自動車市場は急速な拡大傾向にあり、2005年の年間新車販売台数ではスズキのワゴンRが依然首位を保つ。しかし、うかうかと悦に入る場合ではない。J.D.Power ASIA PACIFICという米国系調査会社の昨年12月に行われた調査によれば、軽自動車販売サービスのメーカー別顧客満足度ランキングではスズキは何と4位に甘んじてしまっているのだ。一般に、品質の良さ、価格の安さという競争力は市場の成長とともにその勢いを減じ、付帯サービスという競争力が市場を揺るがすようになる。品質や価格があまり変わらないのであれば、担当者の接客態度やサポート体制の完備など、顧客の視点でサービスを提供してくれる商品を選ぼうとするのは、当然の消費者心理であろう。品質と価格で勝負してきたスズキの付帯サービス戦略は今重要な局面にある。
「いい木を見ると、その木の中にバットが浮かんで見えるんです。」
WBC初代王者に輝いた王ジャパンのキャプテンイチロー選手のバットを作り続けてきた久保田五十一さんは語る。年間3万本超の木材を仕入れるが、そのうちプロ用のバットに生まれ変わるのは、わずか3割に過ぎないという。最高の素材を見抜く力と卓越した技によって生み出されたプロの品質が、プロの雄姿をさらに輝かせる。ものづくり大国日本の魂は、「もの」にこそ込められるべきではないのか。顧客に迎合するサービス業の急速な台頭を尻目に、戦後の高度経済成長を支えた職人魂復活を願う声は多い。BRICsによる製造業界席捲は、ものづくり大国日本のアイデンティティを揺るがす由々しき事態なのであろう。
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